下総精神医療センター

ご挨拶

第五回反復違法行為対応研修会開催にあたって

我が国の犯罪発生率は、同じ程度に発展した国々の中では低いレベルにあります。この状態を支えているものとして、まずは、刑事司法体系が違法行為を厳正に取り締まり、刑罰を与える態勢をもつことが挙げられます。社会を平安に保つために、この先も刑事司法体系はその態勢を保つべきです。

一方で、薬物乱用や窃盗、痴漢、放火、ストーカー行為等の反復傾向のある違法行為は、刑罰で対応しても再び同じ行為が繰り返されることがしばしばあります。これは、それらの違法行為に対して刑罰の再犯予防効果が限定的であることを示しています。反復される違法行為の一部は疾病に基づくものであり、刑罰には対応性がありません。それらの再発防止には治療も必要なのです。

しかしながら、反復される違法行為を治療が必要な病気であるとのみ理解すれば、刑罰での対応はなくなり、そうすると違法行為が増えそうで、対応体系をどのように構成するかというところで検討が進んでいないのが現状です。

その解決のためには反復する違法行為が生じるメカニズムを正しく理解し、原因に対応したはたらきかけを円滑に提供する体系を、医療と司法の連携で構成する必要があります。

当院では条件反射制御法を用いて2006年から反復する問題行動への対応を開始し、高い効果を上げています。その技法を用いながらヒトが行動する本当のメカニズムに関する理解も進みました。それに基づき、すでに構想していた反復する違法行為の初犯も再犯も効果的に予防するための連携の理論が高まりました。

この研修会では、同一の違法行為に対する刑事司法体系の変遷を、刑法学者の前田雅英先生にお話いただきます。その後ロールプレイで、現在の制度には基本的なはたらきかけがあるけれど、摩擦が生じ易いことを体験していただきます。そして、すでに一部開始されており、今後展開させるべきはたらきかけとその提供の仕方をお伝えします。

研修の最後には刑法私案を示し、違法行為を反復する者の疾病性と犯罪性に対して、行動原理に従って合理的に治療と刑罰を言い渡す裁判のロールプレイを行います。反復される違法行為に効果的に対応する技法と制度に関して理解が深まるはずです。

皆様のご参加をお待ちしております。

2023年9月13日
独立行政法人国立病院機構 下総精神医療センター
院長 女屋 光基
薬物依存治療部長 平井 愼二

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