ご挨拶
第12回条件反射制御法研修会にあたって
条件反射に関する初めての報告は、1903年にマドリッドで開催された国際生理学会において、パヴロフによりなされました。それから一世紀以上を経た2006年6月1日に、パヴロフ学説に従った方法を用いて、下総精神医療センターで覚醒剤に対する欲求を抑制する試みを始めました。
多くの人が「依存には回復はあっても治癒はない」と長く言い続けていますが、その言葉に終止符がうたれます。パヴロフ学説に従って開発したこの技法により、当初、対象にした物質使用障害は欲求が生じなくなり、完治に至るものになりました。現在では、この技法を条件反射制御法と呼び、先天反射と後天反射の特性の差異に応じて手順を整え、対象疾患を拡大し、心的外傷後ストレス障害や反応性抑うつ、病的窃盗、病的賭博、痴漢、ストーカー行為などの、防御、摂食、生殖という本能行動の過作動に対しても高い効果が見られています。一方、摂食障害の治療はまだ困難ですが、良好な改善の治療経験も蓄積しており、効果の向上が期待できます。
この展開は当初は驚きでしたが、パヴロフ学説が動物の行動と進化のメカニズムを示していることから、それに従った条件反射制御法が高い効果をもつことは、振り返ると自然だと感じられます。
この研修会ではまずは、ヒトの行動原理と条件反射制御法の基本を正しく理解していただきます。また、この技法を用いる際に対象者にどのように治療作業を指導し、観察するかをロールプレイやテストを交えて、体験的に修得していただき、当院での働きかけ方を詳細にお伝えいたします。
この技法が普及すれば、これまで治らないとされたさまざまな反復する行動に苦しむ多くの人達が救われます。また、ヒトの行動原理が見直されるでしょうから、反復する違法行為に対する司法制度改革も期待できます。
皆様のご参加をお待ちしております。
2019年11月13日
各 位
独立行政法人国立病院機構 下総精神医療センター
院長 女屋 光基
薬物依存治療部長 平井 愼二