下総精神医療センター

ご挨拶

第17回条件反射制御法研修会 開催に際して

宇宙が生まれ、太陽の周りを地球が回り始め、地球上に生物が誕生し、進化して大地に根を張るようになった群が植物で、神経活動で活発に行動するようになった群が動物です。動物の内、何らかの行動をして生きることに成功すればその行動の再現性が高くなる性質、並びに何らかの行動をして生きることに失敗すればその行動の再現性が低くなる性質を併せもつ群が生き残りました。それらの2つの性質で動物の行動を司っている中枢をパヴロフは第一信号系と名付けました。

生き残った動物の中で立ち上がり、二足歩行を始めた群は、自由になった手の作業により現象の多様性と頻度が爆発的に高まり、環境からの多数の連続した刺激に対して望む未来を創造しようとするもう1つの中枢を持つようになりました。その群がヒトであり、その新たな中枢をパヴロフは第二信号系と名付けました。

私は1989年に下総精神医療センターで、不良な結果に終わる行動を反復する病態に対応し始めました。その病態はただ不思議で、効果的な治療ができませんでした。しかし、2001年に覚醒剤乱用者は売人を見ると便意を催すという患者の話を聞き、ずっと気になっていました。ついに2006年に調査をして、その結果から欲求に条件反射がかかわっていることを知りました。覚醒剤摂取に伴う連続した刺激を患者に与え、しかし、当然ですが覚醒剤は摂取しない形で条件反射制御法を開始しました。発展させる経過において、冒頭に記したところを含む進化の現象とヒトが行動するメカニズムを把握し、手順を整えて現在の条件反射制御法を成立させました。現在では薬物や酒に対する欲求は容易に消え、万引きや痴漢行為を生じさせる欲求にも高い効果が見られるようになりました。このように条件反射制御法が広く強い効果を示すのは、その技法の実践と検討により把握したヒトが行動するメカニズムが正しいからだと考えています。

従って、この技法の普及は、精神科領域の技法を整理するだけでなく、一般予防には高い効果を持つけれど反復する違法行為を行う者には焦点の外れた対応をしている刑事司法体系にも変革をもたらすものにもなります。

この研修会はヒトの逸脱した行動に対応する全ての領域の方に、実務を見直す材料を示すものになるでしょう。

皆様に条件反射制御法と基盤理論をお伝えし、未来に効果的な対応体系を構築する一員になっていただけるよう、準備をしてお待ちしております。

2023年5月
独立行政法人国立病院機構 下総精神医療センター
平井 愼二

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