下総精神医療センター

看護なう

安心安全な職場風土の醸成に向けて、CVPPPができること

令和4年4月
1-1病棟(慢性難治性閉鎖病棟) 副看護師長 河野 圭伸

【最初に】
この文章の中では、患者さんの事を「病気の中で苦しんでいる人を中心にして、同じ人である私たちが助けに行くためのもの」と考えるCVPPP(包括的暴力防止プログラム)の理念から、「患者さん」でなく「当事者」と表現しています。

精神科医療の現場では、暴力は不可避に存在すると同時に、全てを防止できる訳ではないと言われています。また欧米でもヘルスサービスに携わる人は26倍、暴力で重傷を負いやすいと言われており、注意が必要であると言われています。これだけ聞くと、「精神科って怖いな」というふうに感じる方も多いと思います。しかし、暴力を科学し、正しい知識を持つ事で、精神科看護としてプロフェッショナルな対応が出来るようになると私は考えています。

私は6年ほど前から、CVPPPというプログラムに参加し、暴力について学び、現在CVPPPトレーナーとして当事者がどのような思いでいるのかを、危機的な状態でも汲みとれるような看護師を目指し働いています。
※具体的なCVPPPの内容は「一般社団法人日本こころの安全とケア学会」ホームページを参照してください。

「CVPPP=当事者の怒りや暴力をコントロールする=暴力防止」、というものではなく、「CVPPP=当事者の想いを知り、受け止められる=安心できる=暴力が無くなる」という方程式が本来のパーソンセンタードを理念とするCVPPPだと考えます。しかし、暴力に介入するスタッフには強い緊張感と疲弊感が伴う事が多く、それらに適切なケアが行われないと、当事者に対して恐怖感や敵意、嫌悪感を持ち続けてしまうことが多いと言われています。その結果、当事者の想いを汲むことが困難になり、適切な対応が出来なくなってしまうことも考えられます。だからこそ、このプログラムが、いかに当事者中心で安心できるようなものとしても、関わるスタッフ達にとっても恩恵的なものであって欲しいと願うのも事実です。

私がCVPPPトレーナーとして1-1病棟で活動している一つに、スタッフに対する暴力後の「振り返りと報告」を行っています。この「振り返りと報告」はCVPPPのプログラムの一部であり、これを行うことで、起こった事実を話すと同時に、自分の思っていた感情について語る事によって心的負荷を軽減することが出来ると言われています。また、自分の中の出来事を整理することができ、正確な事実の把握に基づくマネジメントプランができると言われています。

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病棟でも暴力発生時カンファレンスが行われていますが、再発防止ついて話し合う内容が多く、そこに被害看護師の想いや、それに対するケアは加味されていませんでした。暴力の現場に遭遇すると「暴力に至ったのは私の対応が悪かったのだろうか」や「自分の対応はあれで良かったのだろうか」など罪悪感や不安感が沸き起こります

そこでCVPPPトレーナーが本人と振り返りを行うことで、どのような思いでいるのか感情表出を促し、スタッフが再び通常の業務に戻ることができるようストレス緩和を図り、以降のケアに自信をもって対応できるようにしていきます。また労務上の調整として、暴力を受けたスタッフに対して速やかに受診を促す事や、辛かったことなどを病棟で話せるような職場環境をCVPPPトレーナーが中心となり管理者と協力して作っていきたいと考えています。

皆さんも安心して働ける組織で、患者さんの思いに寄り添える、精神科看護のプロフェッショナルを一緒に目指しませんか?

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