研修情報
第四回条件反射制御法研修会
デイケア・クリニックほっとステーション
院長 長谷川直実
平井1)が、薬物乱用者に対する長年の臨床経験から開発した条件反射制御法は、嗜癖行動の根源となる欲求を制御する治療法である。この治療法は、パヴロフの唱えた条件反射学説に基づいて嗜癖行動のメカニズムを理解することから考案されている
外来で条件反射制御法を実施するには、病棟のような塀で守られていない分、多職種連携、個々人に合わせたルールなどの工夫が必要である。
多職種には、医師、看護師、ソーシャルワーカー、グループホームスタッフ、ピアスタッフなどが含まれ、必要に応じてケア会議、関係者会議が開かれる。治療材料としても、条件反射制御法を続けながら、デイケア内アディクションプログラム、麻薬取締官との面談、訪問看護、芸術療法、アンガーマネージメント、SST、就労支援プログラムなどを併用する。これは、その人をひとりの生活する人とみて、リカバリーを考えるとき、上記の治療的働きかけの併用が必要になってくるからである。
地域・外来で嗜癖行動をみるということは、アルコール、薬物などが手に入りやすいリスクを常に伴い、これは、条件反射制御法の実施に当たっても同じである。そのため、外来で実施する場合、第1ステージにおけるキーワード・アクションは、病棟よりも長い設定が必要である。回数、期間、ルール等も入院病棟とは違うその人に合わせた設定を検討する。個々人に合わせたルールや制限は、その人の症状や問題がおきるパターンに合わせて、例えば上記のようなプログラムに出ること、抗酒剤、薬物検出キット、金銭管理だけでなく、キーワード・アクション(おまじない)の直後にしてはいけないことなどを検討し、指導する。
第1ステージの前半は、欲求の高まった切迫した状況などが正直に話せる関係作りと危ない状況のパターンの観察の期間と考えた方がよい。20分ルールを守らせること自体が問題行動の小さな制限になり、スリップしたとしても状況を特定しやすくなる。そこで、誘因となる状況を作らないようなルールを加えていく。第2ステージに進むタイミングは、病棟ではキーワード・アクション(おまじない)が200回になってからとしているが、外来では、まず標的問題行動が概ね1か月ないこと、キーワード・アクションが1000回位になっていることを目安にしている。
研修では、外来でのおおまかな治療の流れと、標的嗜癖物質、問題行動別の工夫も合わせて紹介する。