研修情報
第五回条件反射制御法研修会
- 地域・外来で条件反射制御法を実施するポイント
デイケア・クリニックほっとステーション
院長 長谷川直実
CRCTで崩したい厄介な後天的反射連鎖は、物質乱用の他にも性嗜好障害、盗癖、強迫行為、PTSD,過食など様々あります。また病的な問題ばかりではなく、例えば貧乏ゆすりなどのちょっとした癖についても応用ができます。
(1)CRCT治療ステージについて
基本ステージは、開始ステージ(キーワード・アクション設定ステージ)、疑似刺激ステージ、想像刺激ステージ、維持ステージと進みます。疑似ステージが目を引きますが、最も重要なのは開始ステージ(負の刺激ステージ)です。このステージは問題についての観察期間でもあります。開始ステージ後半では、問題の頻度は減り、出現する状況を特定しやすくなり、回避する対策に落ち着いて取り組みやすくなります。強迫行為などは、キーワード・アクションの設定と継続のみで軽快することが多く、このステージのみの治療が一般的になりつつあります。
このように、開始ステージのみのCRCT、疑似刺激ステージをせずに想像ステージに進むCRCT(PTSD、一部の性犯罪)、想像刺激を先に少し行って、疑似ステージに進むCRCT,疑似だけを行うCRCT(処方薬乱用)、癖になっているやり方とは違う手順で疑似行為を行い、思考である第2信号系を優勢にするCRCT(ヒューマンエラーなど)など、治療ステージの組み立ては様々です。ステージの組み立てに迷った時、作文の作成がヒントになることもあります。
(2)開始ステージ・キーワード・アクション設定
CRCTを始めるにあたり、まずどのように困った症状、癖が条件づけられ、後天的反射連鎖が定着したのかを考えながら問診を行い、崩すべき標的後天的連鎖を明らかにします。その後キーワード・アクションを設定します。クライアントには「キーワード・アクションの後に標的行動・症状がない一定の時間をセットにして神経活動として定着させる」ことを説明し、キーワード・アクションについて20分間以上の間隔をあけることを指導します。
外来で嗜癖行動をみるということは、アルコール、薬物などが手に入りやすいリスクを常に伴います。そのため開始ステージにおけるキーワード・アクションは、病棟よりも長い設定が必要です。また、個々人に合わせたルールや制限が必要になります。その人の症状や問題がおきるパターンに合わせて、例えば抗酒剤、薬物検出キット、金銭管理、自慰行為の際の空想内容の制限、キーワード・アクションの直後にしてはいけないことなどを検討し、指導します。
(3)他の治療法との併用
必要に応じてケア会議が開かれ、CRCTを続けながら、デイケア内アディクションプログラム、麻薬取締官との面談、訪問看護、芸術療法、アンガーマネージメント、SST、就労支援プログラムなどを併用します。よく考えられた精神療法もデイケアのプログラムも、後天的反射連鎖が余りにも優勢なうちは、落ち着いて取り組めません。CRCTのステージが進み、ある程度後天的反射連鎖が弱まれば、思考が働く余裕ができ、初めて他の治療法が有効になってくるのです。
当日の講義では、キーワード・アクション設定、疑似刺激ステージでの観察についてデモンストレーションを行います。