皆様、お元気でしょうか。
新型コロナウイルス感染症のためにさまざまな集まりが中止あるいは延期となっております。当院でも開催する研修会の予定を変更し、第13回条件反射制御法研修会を今年11月に開催します。感染対策として、参加人数は少なくしましたが、次回は来年2月に開催いたします。
さて、条件反射に関する初めての報告は、1903年にマドリッドで開催された国際生理学会において、パヴロフによりなされました。それから一世紀以上を経た2006年6月1日に、パヴロフ学説に従った方法を用いて、下総精神医療センターで覚醒剤への欲求を抑制する試みを始めました。その試みから発展させ、手順を整え、その技法を現在では条件反射制御法と呼び、反復する逸脱行動に対応する根幹の働きかけとして用いています。
多くの人が「依存には回復はあっても治癒はない」と長く言い続けていますが、その言葉に終止符がうたれます。治癒が期待できるのです。
パヴロフ学説を基にして開発したこの技法により、当初から対象にした物質使用障害は欲求が生じなくなり、治癒に至るものになりました。現在では、対象疾患は拡大し、心的外傷後ストレス障害や反応性抑うつ、病的窃盗、病的賭博、痴漢行為、ストーカー行為などの本能行動の過作動に対しても先天的な反射と後天的な反射の差異に応じて手順を整え、高い効果が見られています。一方、摂食障害の病態には不明な部分を残しますが、良好な改善の治療経験も蓄積しており、効果の向上が期待できます。
この展開は当初は予想していなかったものです。しかし、パヴロフは進化のメカニズムからヒトの行動を解明しようとしたのであり、彼の学説を基にした条件反射制御法が広く強い効果をもつことは、自然なのです。
この研修会ではまずは、ヒトの行動原理を正しく理解していただき、その行動原理に条件反射制御法が対応することを解説します。また、この技法を用いる際に対象者に治療作業をどのように指導し、観察するかをロールプレイやテストを交えて、体験的に修得していただき、当院での働きかけ方を詳細にお伝えいたします。
この技法が普及すれば、これまで治らないとされたさまざまな反復する行動に苦しむ多くの人達が救われます。また、ヒトの行動原理が正しく見直され、反復する違法行為に対する司法制度に改革が生じることも期待できます。
皆様がヒトの行動原理を正しく把握し、社会がより平安になるご活躍をされることを願い、この研修会を開催いたします。