下総精神医療センター

研修情報

第三回薬物乱用対策研修会

中央大学法科大学院特任教授(検事)
阪 井 光 平

現在の犯罪情勢を見ますと,犯罪の組織化は世界的に顕著であり,我が国も例外ではありません。

 特に特殊な製造技術と流通ルートを必要とする薬物製造は,個人でなし得るものではなく,禁制の度合いが高くなればなるほど,利益に敏感な犯罪組織が群がってきます。取締機関のターゲットは,犯罪組織なのであり,末端の使用者は,犯罪組織撲滅にたどり着く標石とも言えます。

 法律は,組織犯罪に厳しくなり,他方で初めて裁判を受ける使用者に対しては,手続を大幅に簡素化するなど,取締機関側の資源の分配にも配慮しています。

 このような中,刑事司法に携わる者は,犯罪の源の除去に興味が向くあまり,末端の使用者の更なる乱用を防止するということは,社会政策の問題であり,刑事司法が関わることではないという方向に進みがちです。

 ただ,薬物犯罪を日常的に扱う警察官や検察官は,結局はエンドユーザーを無くさなければ,いくら組織を取り締まっても薬物犯罪は減らないということを痛感しています。

 他方で,「取調べの可視化」等,取締機関側に対する制約は日増しに苦しくなっており,有効な捜査手段を多く有さない我が国の取締機関の苦悩は深まっています。

 本講義では,このような状況の中,刑事司法手続の中で,乱用防止に対していかなる方策が可能なのかに焦点を当てて,おおよそ次に順序で私見を述べることに致します。

 

   1.薬物犯罪の現況

   2 薬物犯罪取締りの法体系

   3.薬物犯罪の司法処理のプロセスの説明

   4.検察庁における薬物犯罪の捜査・公判の態勢

   5 薬物犯罪の司法手続の特色

   6 乱用防止のために取りうる方策





ページのトップへ戻る