下総精神医療センター

研修情報

第三回薬物乱用対策研修会

  • 社会復帰施設の活動と周辺機関の関係

千葉ダルク施設長
白川雄一郎


 ダルクも昨年度2010年で創設25周年を迎え、今日現在、全国約60か所で活動をしている。約25年前の設立当初から米国のアルコール依存症からの回復のための当事者による自助グループAAを基とする12ステップ・プログラムとグループ・セラピー(ミーティング)をほぼ唯一のプログラムとしてきた。その位置づけも医療・矯正施設と社会との中間施設であり、その運営もほとんどが当事者の常勤職員によっておこなわれていた。その設立当初の周辺機関との関係も薬物依存症からの回復施設としての役割に限定されるものでひとつは医療機関との関係、もうひとつは地域の福祉事務所との関係が主であった。医療機関とはダルク利用者の通院診療と入院治療での関りと精神科医療機関に入院中のクライアントの退院後の行き場としての関わりで福祉事務所とはダルクの利用費用を本人もしくはその家族が負担できない場合、本人に生活保護受給者になってもらうというケースでの関りとそれとは逆に福祉事務所から行き場のない薬物依存症者や、すぐには単独での居宅生活が困難な対象者の紹介での関りである。

 しかし、設立以来のこの約25年の間に、我が国でほぼ唯一の薬物依存症からの民間の回復施設であるという性格上、また、周辺機関からの要請もあり、いわば、本来の薬物依存症からの回復のための自助組織としての活動や役割とは変質した、さまざまな機関との多種多様な関わりや連携が生まれてきている。

 千葉ダルクでは開設以来、薬物需要削減のための取締処分と援助側の∞型連携体系の一貫として利用者の尿検査を積極的に実施してきた。下総精神医療センターで通院診療をうけている者は、その際に、これは現在でも実施している。それ以外の対象者は、当初は、月に二回のメッセージの後に自費で実施していたが、2006年から2008年の九月までは、千葉市の心の健康センターにおいて相談業務の一貫として、月に一度、無料で実施していた。

 しかし、2008年度のセンター長の交替以降、実施できなくなってしまった。以来、現在まで上記の通院診療で実施している者以外は対象者であっても検査実施していない。

 千葉ダルクでは尿検査の実施は、施設の雰囲気づくり、対外的なアピール、それと入寮期間中の規制薬物の使用者の処遇に選択の幅をもたせられる等の理由で有用であると考えている。

 一方で、対象が規制薬物に限られるという点での利用者間での不公平感や継続していく際の費用の支出の問題などの課題もある。

 現在、病棟内で行われている条件反射抑制療法については2010年4月より千葉ダルクの責任者が毎週月曜日その作業に研究補助員として立ち会い、また自らもその抑制療法を経験することで、その効果と作業手順を十分に理解した後、なんらかのかたちでダルクでも実施できればと考えている。





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