下総精神医療センター

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第四回薬物乱用対策研修会 > 研修会プログラム > 第7講義

精神科医療と社会復帰施設の連携

下総精神医療センター
薬物専門病棟 看護師 平川 武幸

はじめに
 規制薬物を反復摂取する者には精神的障害の問題、法的問題、経済的問題、家族の問題の4つの問題が挙げられる。
  これらの問題に、精神科医療施設と社会復帰施設が連携し対応していくために各機関が得意とする分野、不得意とする分野を明確にし、補い合いながらそれぞれの役割を果たすことが必要となる。

Ⅰ.精神科医療施設と社会復帰施設の連携
1.精神的障害の問題
1)精神病性障害の対応
①急性精神病性障害
   社会復帰施設入寮中の者が規制薬物を使用し、急性的に精神病性障害 を発症してしまった場合、社会復帰施設は通報する態勢をもつ医療施設に受診することを避け、遠隔地でも通報しない方針にある精神科医療施設まで受診に来なければならない場合がある。
  よって医療施設は援助機関として、社会復帰施設の活動を妨げることなく、規制薬物を使用した直後でも通報することなく受け入れ、適切な治療を行わなければならない。

②慢性精神病性障害
社会復帰施設入寮者には、慢性精神病性障害を抱えたまま入寮している者もいる。そのような者は症状の改善と憎悪を繰り返しながら社会復帰施設で生活しているため、継続内服と定期的な通院を要し、症状の憎悪期には医療施設の受診と入院が必要である。よって精神科医療施設では慢性精神病性障害の患者が社会復帰施設でも十分対応できるよう患者の情報共有を密に行い、その態勢を整えている。
2)非精神病性障害の対応
①思考に反して薬物を摂取する病態
 薬物の欲求を抑制するのに効果的な条件反射制御法は、開始当初に強烈な渇望を生じる事があるため、渇望の程度により社会から隔離された閉鎖的環境で行う必要がある。

②規則的な生活を送る能力における障害
精神科医療施設では看護師による生活指導を行い、また作業療法に参加するなど基本的生活習慣が取り戻せるよう関わる。また服薬の観察・指導、退院後の生活調整、そして総合的に回復に向かうよう否認の解消も図られているがこれらは十分であるとは言えない。したがって短期間の入院だけで、人間的・社会的回復を図るには限界があることは否定できない。

2.法的問題
 日本の社会復帰施設の多くは、当事者が自助的に展開する活動であり、社会復帰施設は対象者(入寮者)が規制薬物を使用しても通報する方針を持っていない。従って、規制薬物の使用を許し合うだけの犯罪者集団であってはならず、通報しない方針は他の機関の関与を得て、補われなければならない部分である。それを補うことができるのが尿検査である。

3.その他の問題(家族の問題)
 家族や周囲の者は乱用者の薬物使用を止めさせようと、様々な努力をしてしまう。そして乱用者は薬物を使い続ける為に家族や周囲の者を操作しようとする。これらは互いに共依存の関係に陥り、薬物継続使用の環境を整えてしまうと共に回復への動機づけを阻害してしまうことになる。
 よって家族や周囲の者には乱用は薬物依存と言う病気であることを理解し、協力が得られるよう指導していく必要がある。





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