研修情報
第五回薬物乱用対策研修会 > 研修会プログラム > 第16講義
デイケア・クリニックほっとステーション
院長 長谷川直実
病棟という守られた環境の替りに、地域では、多くの人の目や手が逸脱行動や病状悪化を抑える鍵になる。
当院は札幌市の中心部に位置するオフィスビル内に位置する大規模デイケア併設精神科診療所である。同法人で運営している生活訓練事業所、高齢者小規模デイサービス、近隣に当院が立ち上げ、運営にも関与している就労移行、就労継続A・B型事業所、市内にグループホーム2件等があり、医療機関としては、就労支援、訪問看護を実践する多機能型診療所と分類される。
多機能型精神科診療所は、多職種で多機関との連携の中で地域ケアを担っているので、関わりやすさと豊富な選択肢とニーズを提供できる。そして、地域連携がうまく機能すれば、触法事例、多問題ケースなどの困難事例の支援も可能である。
ほっとステーションの平成24年度のデイケア通所メンバーもしくは外来者でケア会議経験者は72名おり、約2割が再犯防止のためのケア会議であった。
困難事例の支援では、ケア会議は必須といってもよい。関係者内での情報共有とそれぞれの役割確認、「応援団」としてのメッセージ、クライシスプラン作り、そしてケア会議の存在自体が逸脱行為のブレーキにもなりうる。
全国には約30カ所の医療観察法指定通院精神科診療所が存在する。その中にはサテライトクリニックで、バックに母体となる精神科病院を持つ診療所も数か所あるが、殆どは全くの無床診療所である。医療観察法の場合、社会復帰調整官がケア会議をコーディネートし、病状悪化時に入院治療を依頼する後方支援病院を探してあらかじめケア会議に参加してもらえるよう促している。
社会復帰調整官は、全体のコーディネーター役を務め、対象者の話をよく聞いて生活環境調査を進め、指定入院医療機関と指定通院医療機関、対象者と家族、つまり対象者と地域社会の橋渡し役を務めている。このような職務柄、社会復帰調整官は、本来ならば保護観察所の職員として取締側にあるところを、現実としては、極めて援助側に近い立ち位置にいることが多い。しかし、他害行為の再犯の前に違法薬物再使用のリスクがある場合、麻薬取締官と同様に社会復帰調整官も取締側としての機能を打ち出した方が連携は純化され、ブレーキはうまく作用するだろう。社会復帰調整官は、それまで築き上げた対象者との良好な関係を壊すことなく取締側としての機能を発揮することができるのではないか。
∞連携を導入し、条件反射制御法と合わせて実践することで、地域で薬物乱用者を支援するにあたり、それ以前よりも治療の枠組みを明確にする。
講義では、外来・地域での薬物乱用者の支援に∞連携を導入することの効果と難しさについて実践例を紹介し、考察を加える。