薬物乱用対策は関係機関がそれぞれの機能を発揮し、欠点を補い合う連携体系を組んで進めるべきです。しかし現在はまだ連携体系が成立していません。
薬物乱用が社会の大きな問題になっている原因は、ヒトの無意識的な中枢がが、薬物摂取を反復すると欲求を生じるようになることです。当院は平成18年に条件反射制御法を開発し、手順を改善させ、現在では薬物に対する欲求を消せるようになりました。必要な対象者には生活訓練を関係施設で提供し、薬物乱用者を治癒した状態に戻すことが出来ます。
一方で、意識的な脳に対しては、それが計画的に行動を司ることから、薬物摂取に対して刑罰で対応する制度は強い抑止力を持ちます。その抑止力を生む刑事司法体系の厳正な態勢は保たれるべきです。
薬物乱用問題を収束させるためには、意識的な中枢と無意識な中枢の両方に働きかけなければなりません。対応する側は法による抑止力と治療や訓練を等しく重要であると位置づけ、相互補完的に連携する体制を整備しなければなりません。取締処分側と援助側の機能は正反対であるからこそ、互いを補い合うことが可能です。
それらの2つの領域が効果的に連携する方法を当院は構想し、また、その構想の一部を関係機関の協力を得て、小規模ではありますが、現場で展開しています。その連携体系の構想と現場への展開法が、いずれ、我が国の政策として導入され、広く用いられることを目指しています。
講義の中では、取締機関や生活訓練をする施設等と当院のこれまでの連携の経験、並びに現在の対応等を紹介します。また、この先の課題と薬物問題に対応するために必要な変化の方向をお伝えします。連携を発展させる各専門職の役割と実践方法に関して理解を深めていただけるはずです。
皆様のご参加をお待ちしております。